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2010年07月号 格式契約書(*1)の罠 その①

中国不動産業界のバブルは周知の事実であり、それを抑制するために今年に入って中国中央から地方まで各級の政府が不動産バブル対策を続々と発表しています。

それらの政策で、住宅ローンに関する規定は最も厳しいと言われています。主に、第2回目以降の不動産購入者に対して、銀行がローンを組んではならない、または金利を高くしなければならないという内容ですが、居住ではなく投資としての不動産購入者の資金を断たせる、または資金調達コストを上昇させることによって、投資を抑制するという狙いですね。効果はともかく、その政策の実行によって、一部厄介な問題が発生してしまいました。

上記政策の発表は2010年4月17日でしたが、その直前に不動産開発会社と売買契約者の中に、多数の2回目以降の購入者がいます。契約した時点では、該当規定は発表されていなかったので、当然ローンが下りるつもりでした。しかし、急に発表された規定によって、ローンが下りなくなる或いは頭金が引き上げられるなどの厳しい状況に陥り、契約期限内に資金を支払えなくなってしまいました。

本来は、急に発表された国の政策は売買双方にとって予測不能な状況変化であり、法律上「不可抗力」として認識できれば、契約の解除が認められます。それによって、支払った前払金も全額返却されるのではないかと一般常識で考えられますが、実状はそうではありませんでした。ローンが下りなくなった購入者に対して、前受金を返却するどころか、期限内に全額支払わないという理由で購入者に違約責任を追及する不動産会社も少なくありません。そこまで不動産会社ができる理由は「格式契約」だと認識できます。

中国では、我々消費者が「中国電信」、「中国移動」のような独占的企業と契約する時、相手から提供された「格式契約書」に署名する以外、交渉の余地がないとも言えます。(*2)当然、多くの素人消費者にとっては、そのフォーマット化されている「格式契約書」に便利性というメリットもありますが、不十分な競争によって、その「格式契約書」に関する交渉に応じない強い企業側の姿勢は横暴としか言いようがありません。

売り手市場である不動産業界においても、そのような横暴な「格式契約書」でも、購入者はサインするしかないのは現状です。購入(予定)者が交渉しようとすると、「買いたい人はいくらでもいるので、貴方には売らない」と言われることは確実でしょう。

7月27日の「現代快報」によると、南京のある投資者が不動産開発会社を相手取って訴訟を起こしました。それは国が不動産価格抑制政策を発表して以来、初めての返品訴訟として注目されています。

投資者は購入契約した時点では、抑制政策が発表されていなく、ローンを申請している間に政策が発表され、結果としてローンが下りなくなりました。不動産開発会社に返品を申し入れたところ、支払期限内に支払わなかったという理由で逆に違約責任を追及されました。政策発表は自分として予測不能の「不可抗力である」と主張する購入者に対して、不動産開発会社は「サインをもらった契約書にローンが下りないことによって支払わない責任も購入者にあると明記されているから、会社はその条文に基づいて違約責任を追及しているだけだ」と応酬しました。

「不可抗力だから、返品の違約責任を負うべきではない」と主張する購入者と「契約条文に明記されているから、違約責任を追及する」と主張する不動産開発会社の対立は結局訴訟まで発展しましたが、なぜその矛盾が生じたのを考えてみると、「格式契約書」の明らかに不合理な条文にあることは明白です。

中国では、不動産購入前にローンが下りる可能性について、不動産開発会社自身が購入者に対して評価していますし、場合によっては、不動産開発会社は指定銀行のローンしか受付けないことまであります。つまり、購入者のローンが下りるかどうかという判断は、事前に不動産会社はほぼ分かっています。上記案件においても、契約前に「貴方の条件だったら、ローンは下りますよ」と購入者に不動産開発会社が言ったから、購入者が契約書にサインしたと報道されています(その話は常識的に信憑性が高い)。でも、それは書面的証拠がなくて、消費者にとって不利な「格式契約書」しかありません。

しかし、サインしたとはいえ、あまりにも不平等な「格式契約書」であり、200万元ぐらいという高い買い物で、違約責任も大きいので、やはり返品を認めてほしいということで、購入者が訴訟を起こしました。

訴訟の結果はまだ分かりませんが、「格式契約書」によるトラブルは増える一方です。ビジネスでも、個人生活でも「格式契約書」を避けられない中国の現状では、上記の案件を例にして、次回ではその対処法を検討してみたいと思います。

*1 「格式契約書」は一般的に、契約の一方が提供する内容は決まっている契約フォーマットと言い、交渉において立場が強い側が提供する。
*2 法律上、「格式契約」でも双方に平等な交渉の権利がある。

つづく

SBFニュース

7月の例会は、7月24日(土)に開催されました。

日本国税理士、高木慎一さんが講師を務めていただき、「移転価格対策を含めたグローバルタックスマネジメント」というテーマで講演していただきました。
下記のSBFホームページでその例会報告を掲載しましたので、ぜひご覧ください。

8月の例会は、8月28日(土)に予定されています。
「上海電音馬蘭士貿易有限公司」総経理の桑原 純さんが幹事を務めます。会社経営に関する講演以外、一流の音響設備によるデモンストレーションも予定されております。

非会員のご参加も歓迎しておりますので、ご興味がある方は、私までご連絡ください。

今月も、下記ホームページの内容追加と更新を行いましたので、クリックしてください。

2003年4月に設立した主に中国(上海)でビジネス活動をする日本人・中国人によって構成される異業種交流会です。

SBF(上海ビジネスフォーラム)ホームページ

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