現代社会における電力の重要性は言うまでもありません。社会の命脈とも言える電力供給の重要性は「事故」或いは「電力不足」などの客観的要因以外、なかなか気がつかないでしょう。
送電線で人が感電事故を起こしたなら、当然人を助けるために、一時的停電措置をとる場合もありますが、このような状況は極めて稀です。しかし、今の中国ではそのよう極めて特別な状況でもなく、広範囲に停電が多発しています。
2010年10月22日の「新民晩報」に「ご飯を炊いている最中に停電された」を題にして、河北省棗強県という地方で毎日4時間しか電力供給されない状況を紹介していました。しかし、棗強県の電力は不足していないし、毎日の様に事故が起きているわけでもありません。ではなぜ、停電が常態になっているのでしょうか。
筆者も仕事の関係で、時々上海周辺の工場に行きます。棗強県ほどではありませんが、停電に悩まされているところは少なくありません。それどころか、上海以外は、ほとんどの地域で停電という現象が見られます。(*1)
真夏・真冬の電力使用ピーク時期でもなく、そんなに広範囲・高頻度に事故が起きるわけでもないのに、停電の常態化には必ずその必要性があると推察できます。
では、誰がその「停電」を必要としているのか、なぜ必要としているのかを考えてみましょう。
中国では、発電する発電所及び送電する電力局はすべて国営ですので、停電をさせることができるのは当然「政府」しかありません。
停電させることによって、住民たちの生活に影響を与えると同時に、生産にも悪影響を及ぼします。停電による生産停止が続ければ経済発展を遅らせる結果となりますから、GDPを最重視している中国においては政府自ら経済発展を阻害するような停電行為を実施するのはとても不思議ですね。
その不思議な現象の背後に何かが隠されているのかについて、誠鋭時事今号から考えてみます。
中国の高度経済成長は、主にGDPを指針としています。GDPの高成長率は中国政府にとって内政外交の柱ともいえる存在ですが、GDPの高成長は中国の酷い環境問題を引き起こしているのも事実です。
頻繁に発生している異常気候によって、環境問題に対して全世界で非常に関心が高まっています。中国は責任のある大国、それに環境悪化が激しい大国として、その問題を回避できません。中央政府のトップは、世界に対して中国が環境問題を解決するとの決意を伝え、内外にその具体的な数字まで公約しています。
公約するのは中央政府ですが、実現させるのは各地方政府の責任になります。GDPの成長目標は達成しなければなりませんが、中央政府が掲げている省エネなどの環境目標も達成しなければなりません。現状で、そのバランスを取ることは至難な業と言えましょう。
単位GDPに使用するエネルギー(石炭・電力など)という統計があります。電力を例にすれば、1RMBのGDPに必要な電力が少なければ環境に対する負担が当然軽くなります。そして、省エネ目標に近づきます。
しかし、単位GDPに使用する電力(エネルギー)を低減させるためには「技術」が必要です。その技術を「製造大国」である中国が持っていないため、環境を犠牲にして発展を求めている現状で、技術がないまま、急に「発展」と「環境」両方一度に解決させるには無理があります。
その道理は非常に明白ですが、中央政府は「発展」と「環境」を両立させなければならない苦境に立たされているのも事実です。どうして、その状況になったのはここで討論するつもりがありませんが、中央政府のメンツを保つためだけの理由でも、地方政府は踏ん張らなければなりません。
両立させるための基礎である「技術」は一夜にして獲得できるわけがありませんので、期間通り「省エネ」目標を達成させるためは、別の方法を考えざるを得ませんね。
「省エネ」は字面通り、エネルギーを節約することです。最大の節約は使用しないことですが、住民・企業の同意が得られるはずがありません。だったら、強制的に使用できなくすることは「自然な」選択になります。
「え~、そんな…」と思う人も多いでしょうが、それは「強勢政府」が運営している中国の「常識」です。地方政府にとって、住民・企業の不便さと中央政府の命令にそむくこと、どちらを選択するのかは考える必要もないでしょう。
まっ、政治的な話はおいといて、次回の「誠鋭時事」で「停電」事件を経営の角度から分析してみたいと思います。
*1 上海では万博が開催されているので、停電は絶対あり得ません。
以上
10月の例会は10月23日(土)に開催されました。
「上海マイツ諮詢有限公司 コンサルティング事業部」の高 原さんが幹事を務め、「棚卸について」というテーマで講演をしていただきました。
11月の例会は11月20日(土)に開催予定です。
今回の幹事は「電通(上海)広告公司」の内海 揚さんが務め、中国の広告事情について講演していただく予定です。
非会員の方々も参加歓迎いたします。ご希望の方は私までご連絡ください。
今月も、下記ホームページの内容追加と更新を行いましたので、クリックしてください。
2003年4月に設立した主に中国(上海)でビジネス活動をする日本人・中国人によって構成される異業種交流会です。