前号で、中国の一部地方政府において、中央政府が掲げている環境改善目標を達成させるために、所轄住民・企業の利益を犠牲にして停電を常態化にした記事を紹介しました。
停電による発電量が減少され、「数字上」省エネ努力結果に見せかけることは「粉飾」と言います。今年3月~5月号の「誠鋭時事」で「狂っている計器盤」を例えにして、不正確な会計・統計は経営にとって大きなリスクであることを説明しましたが、その中には当然「粉飾」が含まれます。
ただし、不正確な会計処理による「粉飾」は事実に基づいていないことに対して、「停電」による「粉飾」はもっと悪質で、「事実」まで変えられてしまいます。80kmで走行している車の計器は100kmと表示していると、計器は壊れていると言われることと同様に、実際の発電量が100万KWの都市で80万KWという統計データを発表したら、事実に基づいていない「嘘」だと非難されます。しかし、本当に80万KWしか発電しなかったら80万KWという統計データは正確となります。当然、実際に100万KWの需要があること、その需要が満たされないことによって住民と企業に相当な不利益を与えたことは「真実」を追求する権利者たちにとって「知ったことじゃない」でしょう。
もし、100万KWの発電事実に基づく80万KWの統計がウソだと認識すれば、強引な停電による80万KWの発電事実に基づく統計がセイカクだと言えるのでしょうか。筆者としては、そのようなセイカクは、より悪質なウソとしか言いようがありません。
もし、地方政府を中間管理者に例えれば、中央政府が高級管理者になります。まず注目すべくことは、なぜ中間管理者が一般社員(地方政府にしたら住民・企業のこと)の利益侵害をしてまでも、高級管理者に対して「粉飾」行為を行うかという理由です。
「それは簡単です。上司によい評価を得たいからでしょう」という回答はだれでもわかります。その回答によって、上司のよい評価を得るために、嘘までする中間管理者に問題があるような結論になります。一方その上司である高級管理者は騙された「被害者」になります。その分析は筆者も条件付で賛成します。
筆者が言う「条件」というのは、部下と上司はあくまでも「個人」であることです。つまり、その二人は単体のヒトとして、嘘をする部下は悪い、嘘を吐かれた上司は被害者になります。しかし、その条件を変えれば、嘘の責任は上司にあるとも言えるようになります。
部下と上司は、組織に所属しているからそのように呼ばれます。だったら、単体のヒトではなく、組織人としてその条件を変えて分析すれば、もっとその問題の本質が見えるのではないかと考えられます。
組織人として、中国の組織運営は「性善説」ではなく、「性悪説」という前提は一般的です。そして、自分の利益を最大化にさせるのは当然の考え方です。その2点によって、部下のウソは上司の誘導によるものだと分析できます。
部下が組織の中で利益を最大化させるためには、よい評価が必要です。その評価制度を作るのは上司です。もし、その上司は部下を評価するのは自分しかないという制度を構築したら、部下が利益の最大化を実現させるために、その上司にすべてのエネルギーを使い、上司を喜ばせるほかに方法がありません。
ウソすることによって上司が喜べば、自分の評価が上がり、利益最大化の結果に繋げられます。
単体のヒトであっても、一般的に嘘は不道徳で悪いことだと言われますが、「性悪説」の組織人にとっても決して許される行為ではありません。組織としてその「性悪説」を知りながら、それを防止できなかったら、高級管理者の責任として追求すべきではありませんか。つまり、悪を放置する高級管理者にも責任があります。
また、その高級管理者は組織の制度を構築する権利を持っていれば、なおさら責任重大です。なぜなら、自分を喜ばせなければよい評価を与えない制度によって、嘘という悪を作った責任まであります。部下は嘘をしたくてしたわけではなく、上司が偏った制度を構築したことにより、部下はよい評価を得るために嘘をつかざるを得ないと誘引されてしまったと筆者は考えています。
評価者が上司しかいないという単一性は、評価制度に良く見られる問題です。メリットとして評価が効率的行わることが言えますが、評価対象に嘘を吐かれるリスクもあります。
そのリスクを回避する方法は、決して難しくありません。評価者・評価角度を増やせば、比較的に客観的評価することができ、嘘もばれやすくなるため減少するでしょう。
もし、中央政府が地方政府に対する評価が、地方政府報告の省エネ指標のみに頼らなければ、もし、中央政府は地方政府の管轄する住民・企業の意見も地方政府に対する評価に使用すれば、地方政府も「停電」によるウソができなくなります。
企業において、部下に対する評価はその上司だけではなく、その部下の部下、同僚、取引先など周囲の人々にも意見も求めるような360度評価制度を確立できれば、もっと立体的評価ができ、部下もその上司にウソを吐きにくくなり、その必要性もなくなるかもしれません。
当然、「イエス・マン」が好きの上司であれば、どうぞ「単純な」評価制度を確立し、どんどん部下に喜んでもらえばよいでしょう。ただし、その自己満足を追求しても、企業の利益を損なわない保証だけはお願いしたいものですが・・・
つづく
以上
11月の例会は11月20日(土)に開催されました。
予定した幹事が急用のため、急遽「上海坦思計算機系統有限公司」の副総経理である東 誠さんに幹事交代をしていただき、「市場転換する中国内IT企業と再進出する日本企業」というテーマで講演をしていただきました。
12月は年末総会と忘年会を12月11日(土)に開催予定です。
非会員の方々も参加歓迎いたします。特別ですが、ご案内はこのメールに別添いたしますので、ご希望の方は私までご連絡ください。
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2003年4月に設立した主に中国(上海)でビジネス活動をする日本人・中国人によって構成される異業種交流会です。